国語に悩める皆さん、こんにちは。
元・理系、元・国語嫌いのプロ国語教師、タゾエです。
小学生の語彙力を伸ばすために大人ができること
以小学2年生の頃から学習塾に通っているというお母さんが溜息交じりに
「塾の先生に『この子は言葉を知らなすぎる』って言われます」
とおっしゃっていました。
このようなお悩みは多くのご家庭がお持ちのようですね。
言葉の意味を尋ねると、ことごとく「分からない」「知らない」と答えることを指摘され、
塾から2つのアドバイスをされたそうです。
①とにかくたくさん本を読ませる
②語彙力や四字熟語の本などを読ませる
私はこの話を聞くたび、
「ああ~出た出た、『とりあえず多読のススメ』(笑)。」
と心の中でニヤニヤしてしまうのです。
この手のアドバイスをする先生は珍しくありません。
「うちも塾の先生に言われた~」という方も多いのではないでしょうか?
これはあくまでも私の感覚ですが…
このようなアドバイスをする人は…
実は…
国語の教え方がよく分からない、
国語をよく知らない、
という人が多い感じがします…(笑)
実際に国語の本質を知らない塾の先生は多いです。
子どもの語彙力を育むには、どうしたらいいのでしょうか。

語彙力はイメージ力、連想力
「この子は語彙力がない」「この子は言葉を知らなすぎる」
とよく言う教師は、
辞書に書いてあるようにきちんと答えることを期待して
「この子は語彙力がない」と決めつけている可能性が高いです。
確かに国語が出来る子は難しい言葉を多少知っているかもしれませんが
辞書一冊暗記しているわけではありません。
我々大人も
一つ一つの単語を取り出してこの言葉の意味は何?
と英単語の意味を答えるように聞かれたら
辞書に書いてあるように答えることができるでしょうか?
でも国語力がある人は、
辞書のようにきっちりと説明することはできないけれど、
内容はなんとなくわかっているのです。
正確ではなくても
自分の言葉で
相手に伝わるように説明することができます。
それでいいのです。
では国語が出来る子が何の力を持っているのかと言うと、
使われている漢字や使われている言葉の前後の流れから
連想ゲームのように
「ここでこう言っているから、多分こんな意味なんだろう」
と自然と意味を理解しているのです。
いちいち立ち止まって意味が分かるか、分からないか?なんて考えないのです。
かなり曖昧ですが、イメージして何となくこんな意味っぽいと解釈できるのです。
語彙力は〇か×か、の思考法では伸びにくい
この何となく文脈で読み取る力が身についていると、
どんな文章でもそれなりに読みこなすことが出来ます。
正確な知識がなくても、自力でどんどん読み進んでいける。
何もない乾いた大地にグングンと水脈を自在に広げていける思考、という感じです。
現在は何処でも効率性が重視される傾向にあるため、
単純明快な暗記思考が効率がいいものとみなされます。
このやり方は教える側が楽で、
かつ簡単に偏差値を出すことが出来るので
塾でも学校でもこのやり方が取り入れられています。
この思考だと、〇か×かの一方向の思考しか育ちません。
自分なりに考えを深めたり、
解釈したりする力が育ちにくいです。
この思考は国語の読解には通用しません。
だから国語は他の科目と同じように勉強してはいけないのです。
語彙力が低い子は一点凝視の思考をしている
国語が出来ない子は語彙力がない、のではなく、
前後の流れから言葉の意味をイメージする、ということをほとんどしていないのです。
分からない言葉だけを、ジーッとみて、
「分かりません」と言うのです。
たとえば漢字テストで見てみましょう。
以下の漢字の問題を見てください。
①早寝早起きのシュウカンを身に付ける。
②この作家は既にコジンです。
国語が出来ない子、語彙力がない子は
①を週間、②を個人
と平気で答える可能性があります。
なぜならカタカナ部分しか見ていないからです。
「よく見たら出来たのに―」という問題が20点分くらいある可能性がありますよ。
スピードや効率性だけを追求すると視野が狭まります。
語彙力はおろか、読解はますますつらくなるでしょう。
ます、これ一冊覚えたら語彙力が付く、などの短絡的な思考を止めてください。
国語力は木を一本育てるようなもの、とお考え下さい。
子どもを風が吹けばすぐ折れるような木に育てたいでしょうか?
しっかり根を張った、どっしりした大樹のように育ってほしいですよね。
それにはそれ相応の時間と手間がかかるのは当たり前です。
時々、「何か月で偏差値70になりますか?」などと問い合わせをいただきますが、
その様な考え方では何年かかっても語彙力、国語力は身に付けられないでしょう。
偏差値ばかり追いかけておられる方は、
まずは目の前のお子様と向き合いましょう。
語彙力を無理なく身に付けるには
語彙力を増やすためにはイメージ力と連想力が必要だとお話しました。
そして乾いた大地に水脈を自在に張り巡らす力です。
この力を身に付けるには、
楽しみながら文章に触れる機会を沢山持つことが大切です。
また好きなことに没頭することが頭をよくするというのは、
脳科学的にも証明されています。
つまり、その子が好きな分野の本を周りにおいてあげるのです。
例えばたくさんの文字が苦手であれば最初は図鑑でもいいのです。
興味がありそうな分野、放っておいても黙々とやり続けること。
そんな分野の本や図鑑を持たせてあげると良いです。
その様な手助けこそ、周りの大人はするべきです。
子どもが好きな話題を通して会話をして楽しむ。
大人はどんどん突っ込みを入れていきます。
「これはどういうこと?」
「あなたはどう思うの?」
「これについて教えて」といった感じで。
日常生活のなかで語彙力を身に付けられるのです。
好きなことから、
疑問が生まれ、会話が生まれ、疑問点を調べようと
だんだんと本に手が伸びるようになります。
子どもに質問されたら「これを読んでみたら」と勧めたり、
いっしょに図書館に足を運ぶ。
最初は親が寄り添って促すことが大切です。
親が子どものために今できることをする
これを聞いて
何だ、そんなことかと思いましたか?
大したことないと思いましたか?
面倒くさいと思いましたか?
手間がかかるな~と思いましたか?
だとすれば、生身の我が子ではなく、
理想の我が子を手っ取り早く手に入れたいだけなのかもしれません。
理想の我が子を追いかけているに過ぎないのかもしれません。
一体何のために?
それは胸に手を当てて聞いてみてください。
ちなみに当教室の生徒さんのお母さまにこのことを伝えましたら、
「早速子どもたちを連れて図書館に行きます!」と仰っていました。
国語や語彙力は塾に丸投げでは絶対に身につきません。
家庭の力がメインです。
小学生を持つ、お父さん、お母さん!
お子さんと一緒に語彙力を鍛えましょう。
元・理系、元・国語嫌いのプロ国語教師が運営する国語教室です。
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